Mr.ジェムの置き手紙

これから独立し、食を通じて世界を幸せにしたい同志たちへ、僕の経験が少しでも役に立つことを願って。

第0話〜プロローグ〜

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僕は、お菓子が好き。

 

シュークリームとか、ガトーショコラとか、ドーナツとか。
甘い物を食べてる時間はいつも幸せ。
クリームたっぷりな生菓子も、素朴でシンプルな焼き菓子も、甘い物はいつだって僕の心に幸せを生み出してくれる。

 

 

 

僕は、お菓子が好き。

 

中学生の頃からの夢だったパティシエになったはずなのに、気付いたら仕事内容が料理ばっかりになっていて、もういっそ料理の道に進もうかと思った時期もある。
仕事量と収入が釣り合わない飲食業に嫌気がさして、場所を選ばず働けるノマドワーカーに憧れ、ブログに手を出した時期もある。


自分で商売することを考え出してからは、どうやったらお金を稼げるのかということで頭がいっぱいだった。
思い付いたことは紙に書き出し、友人に話した。
いろんなビジネス書を読んで、どういう稼ぎ方があるのか勉強した。
どれくらいの収入があれば今の自分は生きていけるのか計算した。
どんな形をとれば、効率よくラクして利益をあげられるか考えた。

 

 

 

僕は、お菓子が好き。

 

ある日、「これならいけるかも」と思ったアイデアを父に話してみた。
返ってきた言葉は期待していたものと違った。

 

『それ面白いかもしれないけど、誰がお金払うの?』

 

そこでようやく気付いた。
僕は自分のことしか考えていなかったんだと。
自分が面白いと思うこと、ラクできることばかり考えていたと。

 

『どうやったら誰かを幸せにできるか考えてみたら?』

 

という言葉で父の話は締めくくられた。
そこからしばらくは、「誰かを幸せにする方法」で頭がいっぱいだった。

 

 

 

僕は、お菓子が好き。

 

ある日、本屋をウロウロしてる時にいきなり、僕の中に一つの考えが生まれた。

 

僕にとって『お菓子』とは、『幸せの象徴』
今までの人生、お祝いの空間にはいつでもケーキがあった。
ちびっ子たちにとって『パティシエ』とは、『夢の職業』
「将来なりたい職業ランキング」では毎回上位にいる。

 

けれども、アレルギーを持っているせいでケーキを食べることができないちびっ子は少なくない。
なぜならケーキの主原料である「小麦」「卵」「乳製品」は三大アレルギーと言われているほどだから。
発症するちびっ子たちは年々増えてきているらしい。

 

保育園でのお誕生日会。
みんながケーキを食べてる中、アレルギーを持っている子は寂しそうにゼリーを口に運ぶ。

家での誕生日パーティー
お兄ちゃんが美味しそうにケーキを食べてる横で、妹は「いいなぁ…」と悲しそうに俯く。

 

そんなのおかしい。
そんな世界は間違ってる。
どうして『お菓子』の周りで『悲しみ』が生まれてしまう?
僕にとっては『幸せの象徴』なのに。

 

 

僕は、お菓子が好き。

 

だから、お菓子をみんなで囲む空間くらいは、幸せで満たされていてほしい。
アレルギーを持っている子も、そうでない子も、みんなが同じケーキを分け合って、『美味しいね』って食べながら笑顔になってほしい。

 

ただし、アレルギーを持っていない子は、普通のケーキの味を知っている。
だからこそ、「アレルギー対応のケーキだから、あんまり美味しくなくてもしょうがないよね」なんて感想を抱かせてはいけない。

 

アレルギーを持っている子たちも、成長するにつれて克服していく場合が多い。
克服して普通のケーキを食べた時に、ギャップを感じないほどの味にしたい。

 

みんなにはちゃんと『美味しいケーキ』を食べてほしい。
『夢の職業』に就いている僕ならば、きっと実現できるはずなんだ。

 

 

 

僕は、お菓子が好き。

 

 

お菓子が好きな人なら、それだけで僕は仲間だと思ってる。

 

もしもそんな仲間の大切な人がアレルギーも持っていたとしたら。
大好きなお菓子を分けあうことができないじゃないか。

それは寂しい。
あまりにも寂しすぎる。

 

大好きな物を、
大好きな人と、
共有することができたなら。

それはどれほど幸せなことだろう。

 

 

 

僕にはやりたいことがいくつかあるのだけれど、自分がやりたいだけのことは後回しにすることにした。

 

まず取り組むべきは、自分がやりたいこと、自分ならできることで、誰かが幸せになってくれること。
つまり僕の場合は、「三大アレルギーを持っている人でも食べられる美味しいケーキ」を作ること。
僕が住んでいる鹿児島には、そういうお店がまだまだ少ない。
だからこそ鹿児島でやる必要がある。

 

 

自分の手で100人を幸せにするんだ。
幸せの輪をちょっとずつ広げていくんだ。

 

たった100人でも幸せな人が増えれば、きっと世界はもう少しだけ平和になると信じて。